法定相続情報一覧図は自分で作成可能?費用や書き方・手順を徹底解説
身内が亡くなった直後、遺族を待ち受ける膨大な相続手続き。不動産の名義変更(相続登記)をはじめ、複数の銀行口座の解約や証券会社の移管、各種年金の手続きなど、行く先々で「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式」の提出を求められ、途方に暮れるケースが後を絶ちません。戸籍謄本の束は厚さ数センチに及ぶことも珍しくなく、1つの窓口に原本を預けて返却を待つだけで数週間から数か月が経過してしまうのが従来の大きな悩みでした。
その手続きの煩雑さを劇的に解消する切り札として定着しているのが、法務局が無料で公的証明を発行する「法定相続情報証明制度」です。一度法務局で「法定相続情報一覧図」の認証を受ければ、あの分厚い戸籍謄本の束が「公的な紙1枚(または必要枚数分)」に集約され、各種手続きを同時に並行処理できるようになります。本記事では、費用をかけずに自分で作成する具体的な書き方や見本、必要書類の集め方、代襲相続時の注意点まで、実務の最前線から分かりやすく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「法定相続情報一覧図」は法務局の手数料が完全無料であり、Excelテンプレート等を活用すれば一般の方でも自分で作成・申請が可能。
- 要点2:認証後の証明書を複数枚取得することで、銀行の相続手続きや法務局での相続登記などを同時に進められ、手続き期間を大幅に短縮できる。
- 要点3:代襲相続や数次相続、兄弟相続など家系図が複雑な場合は、司法書士への外注相場(2万〜5万円程度)も視野に入れつつ柔軟に判断するのが鉄則。
【制度の真実】なぜ法定相続情報一覧図で相続手続きが劇的に短縮できるのか?
相続実務において、手続きの停滞を引き起こす最大のボトルネックは「戸籍謄本一式の使い回し」にありました。通常、被相続人(亡くなった方)の口座解約や不動産登記を行うには、出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の原本が必要です。しかし、これらを1セットしか用意していない場合、A銀行に提出して原本還付(返却)を受けるまでに1〜2週間、戻ってきたらB証券へ提出し、さらに次は法務局へ……と、完全な直列処理を余儀なくされていました。
この問題を根本から解決するのが法定相続情報証明制度のメリットです。法務局に戸籍一式と自分で作成した家系図形式の一覧図を一度提出すると、登記官が内容を精査したうえで、公的な認証文が付された「法定相続情報証明書」を希望した通数分、完全無料で交付してくれます。
この証明書が手元に5枚あれば、5箇所の金融機関や行政窓口へ同時に書類を提出する「並行処理」が可能になります。さらに、窓口担当者が膨大な戸籍を1文字ずつ解読する確認作業が省略されるため、金融機関側の審査スピード自体も大幅に早まるという二重の時短効果が生まれます。

【費用・難易度比較】自分で作成 vs 専門家へ依頼の徹底検証
「自分一人で作れるのか、それとも司法書士に頼むべきか」は、多くの相続人が直面する現実的な分かれ道です。法務局に納める法定手数料は0円ですが、戸籍の収集実費や専門家に支払う報酬には明確な差が存在します。
| 項目 | 自分で作成・申請 | 司法書士・行政書士へ依頼 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 法務局の手数料 | 0円(何通取得しても無料) | 0円(公的手数料は同一) | 公的発行費用は完全無料 |
| 専門家報酬相場 | 0円 | 約20,000円〜50,000円 | 相続登記とセット依頼で割引例も |
| 必要書類の収集費用 | 実費のみ(約3,000円〜1万円) | 実費 + 取得代行手数料 | 広域交付制度の活用で自力取得が容易化 |
| 作業負荷と所要時間 | 図面作成・申請に約1〜2週間 | ほぼ完全丸投げ(1〜2回の面談) | 時間対効果で選択が分かれるポイント |
実務上の判断基準として、配偶者と子どもだけのシンプルな構成であれば、法務局公式のエクセルテンプレートを活用して自力で作成する難易度は決して高くありません。一方で、後述する代襲相続が何代も重なっている場合や、兄弟姉妹相続で戸籍の追跡が数十通に及ぶ場合は、専門家の費用相場を払ってでも依頼する価値が十分にあります。
【実践ガイド】法定相続情報一覧図の書き方見本と失敗しない作成ステップ
一覧図の作成は、基本ルールさえ押さえればパソコンの表計算ソフト(Excel)やワープロソフトで簡単に作成できます。用紙サイズは必ずA4サイズ(白紙・縦向き横書き推奨)を使用し、手書きではなく印字での作成が標準です。
ステップ1:必要書類(戸籍謄本等)の収集
申請にあたって法務局へ提出する必須書類は以下の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(抄本でも可)
- 申出人(手続きを行う代表者)の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等のコピーに「原本と相違ない」旨を記載・署名)
- 各相続人の住民票記載事項証明書(住所を一覧図に記載する場合)
ステップ2:一覧図の記載ルールとフォーマット
一覧図の上部には「被相続人 〇〇 〇〇 法定相続情報」と表題を付け、被相続人の情報(氏名、最後の本籍、最後の住所、生年月日、死亡年月日)を明確に記載します。そこから実線(二重線は婚姻関係を示す)を伸ばし、各相続人の「続柄、氏名、生年月日、住所」を配置していきます。
注意すべきは、続柄の表記方法です。単に「長男」「長女」と書くのではなく、戸籍の記載通りに「子」と表記するか、あるいは相続関係を明確にするため「長男(子)」「長女(子)」のように「(子)」を併記するのが法務局の統一ルールとなっています。
ステップ3:代襲相続が発生している場合の書き方
本来の相続人である子どもが被相続人より先に亡くなっており、その孫が相続権を引き継ぐ「代襲相続」の場合、図面上で亡くなっている子どもの枠に「(被代襲者)氏名、死亡年月日」を記載し、その下から線を伸ばして孫を「(代襲相続人・子)氏名」と紐付けます。戸籍の連続性が一目で分かるレイアウトに仕上げることが補正(差し戻し)を防ぐ最大の鍵です。

【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
実際に制度を利用した方々の体験談や、窓口で頻出するトラブルの傾向を分析すると、手続きをスムーズに終えた人と挫折した人の間には明確な分岐点が存在します。
都市部の法務局を利用した50代男性の手記によると、「父の遺産分割で4つの銀行と2つの証券口座を解約する必要があった。最初の戸籍集めこそ最寄りの市区町村窓口で広域交付を利用して半日で終わったが、一覧図の作成で『住所の丁目・番地の表記が住民票と1文字ズレている』という理由で法務局から補正連絡が入り、2度窓口に足を運ぶことになった。しかし、一度完成した証明書を5通受け取ってからは、各銀行の窓口に同時に郵送でき、わずか3週間ですべての解約金が指定口座に振り込まれた」と語られています。
SNSや相談コミュニティで多く見られる失敗パターンは、「相続放棄した人」や「遺産分割協議で何ももらわない人」を一覧図から勝手に除外してしまうケースです。法定相続情報一覧図は「被相続人の死亡時点における客観的な法定相続関係」を公証する書類であるため、遺産分割の結果にかかわらず、法的な相続人全員を漏れなく網羅しなければなりません。この原則を誤解していると、申請時に確実な差し戻し対象となります。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネット上の情報には、制度の運用に関する誤認が一部散見されます。実務でトラブルに発展しやすい3つの盲点を整理します。
1. 証明書自体の「有効期限」と提出先のローカルルール
法務局が発行する法定相続情報証明書自体には、法律上の有効期限は定められていません。しかし、提出先となる銀行や証券会社などの金融機関側が「発行から3か月以内(または6か月以内)のものに限る」といった独自の受取基準を設けているケースが多々あります。手続きが長期化しそうな場合は、提出先の内部規定を事前に確認しておく必要があります。
2. 証明書の「再交付」は当初の申出人のみ可能
法定相続情報一覧図の保管期間は法務局で5年間と定められており、この期間内であれば証明書の再交付(追加発行)を無料で受けることができます。ただし、再交付を請求できるのは「当初に申出を行った申出人本人」またはその委任を受けた代理人に限られます。他の共同相続人が勝手に追加発行を受けることは原則できないため、申出人を誰にするかは最初の段階で家族間で合意しておくことが大切です。
3. 法務局の提出先は「全国どこでも良い」わけではない
申出書を提出できる法務局(管轄)は法律で厳格に定められており、以下の4箇所のいずれかを管轄する法務局に限られます。
- 被相続人の最後の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
本制度の利用価値が極めて高いのは、「解約すべき銀行・証券会社の口座が3箇所以上ある人」や「不動産の相続登記と預貯金解約を同時に進めたい人」です。戸籍謄本の原本還付待ちによる時間的ロスをゼロにできるため、費用対効果は絶大と言えます。
一方で、相続財産が「地元の信用金庫1口座のみ」で不動産も所有していないようなケースでは、わざわざ法務局で一覧図を作成・認証してもらう手続き自体が二度手間になる可能性があります。また、家族間の関係性が希薄で他の相続人の現在戸籍や住民票を取り寄せる協力が得られない場合や、関係図が複雑を極める場合は、無理に自力で抱え込まず、心理的境界線(バウンダリー)を保つためにも司法書士などの専門家へ速やかに相談することをおすすめします。

【法定相続情報一覧図】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:法定相続情報一覧図を提出すれば、遺産分割協議書や印鑑証明書は不要になりますか?
A1:不要にはなりません。法定相続情報一覧図は「誰が法定相続人であるか」を公証する書類に過ぎず、「誰がどの財産を取得するか」を証明するものではありません。金融機関の解約や不動産登記では、一覧図に加えて遺産分割協議書や各相続人の印鑑証明書が別途必要です。
Q2:申出は郵送でも行えますか?遠方の法務局へ行く時間がありません。
A2:郵送での申出および証明書の受取が可能です。申出書、一覧図、戸籍謄本一式、本人確認書類に加えて、返信用封筒(簡易書留やレターパック等推奨、宛名記載・切手貼付)を同封して管轄法務局へ送付してください。
Q3:一覧図に各相続人の「住所」は必ず記載しなければなりませんか?
A3:住所の記載は任意(選択制)です。ただし、住所を記載しておくと、不動産の相続登記手続きにおいて「新名義人の住民票の提出」を省略できるなど実務上のメリットが多いため、特別な事情がない限り住所も併記して作成するのが一般的です。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
相続登記の義務化に伴い、放置されていた不動産や預貯金の名義変更は国民全体の重要な責務となりました。その煩雑な手続きのハードルを下げ、時間とコストを最小限に抑えるための最も強力な武器が「法定相続情報一覧図」です。
戸籍の収集から図面の作成まで、手順を一つずつ正確に追っていけば、一般個人でも十分に対応可能です。まずは被相続人の戸籍一式を手元に揃え、法務局のテンプレートを用いて自身の相続関係を整理することから着手してみてください。ご自身の状況に合わせて自作と専門家への依頼を賢く使い分け、スムーズな相続手続きを実現させましょう。 (出典: 法定 相続 情報 一覧 図(Yahoo!ニュース))